平安宮跡からは、数多くの墨書土器(ぼくしょどき=墨で何かが書かれた土器)が見つかっていますが、その多くは漢字で、仮名のものはごく少数だそうです。また、私が考古資料館で伺ったところでは、土器に書かれている仮名はすべてひらがなで、カタカナが書かれたものは見つかっていないそうです。その理由は、見つかった土器に書かれている文章が和歌であることが多いためだろうということでした。この土器(かわらけ)にも「ひらがな」が書かれています。何が書かれているのかを分析することも研究の一つです。写真にある和歌の文は、藤岡忠美(ふじおか ただはる)氏によるものです。□は、読み取りが不可能な部分を指しています。
2011年に藤原良相(よしみ)邸推定地から発掘された遺物で、2015年現在最古級のひらがな遺物です。8行以上にわたって50文字ほどの仮名文字が書かれています。2013年5月12日に京都新聞日曜版シリーズ「遺物はささやく47」(著 京都市埋蔵文化財研究所主任 丸川義広)によると、この遺物に書かれているのは和歌で、6、7行目が「好きな人憎しと思はれ」と解釈されるそうです。そのため、この遺物は『うつほ物語』『伊勢物語』などの平安時代初期の文学にみられる「かわらけ(写真のような土器の皿)に歌を書いて相手に送る」という行為の具体的な資料として注目されているそうです。