では、「いろは」とはどのようなものなのでしょうか。
万葉仮名で書くと(右から縦書き)
これをひらがなで書くと (右から縦書き)
「いろは」は、次のような意味のある「歌」であると言われています。(横書き)
色はにほへど 散りぬるを
我が世たれぞ 常ならむ
有為の奥山 今日(けふ)越えて
浅き夢見じ 酔ひもせず
「いろは歌」を見て気がつくのは、「いろは表」には、濁音(だくおん)•半濁音(はんだくおん)表示がないことです。(濁音とは、ガ行、ザ行などの音、判読音とは、パ行の音のことです。)実は、濁音•半濁音は、昔は普通の文章には付けなかったそうです。必ず付けるようになったのは近代以降だそうです。それから、「いろは」には、「ん」もないですね。
現在では、主に「あいうえお」順がアルファベットのABCDEのような文字の順列として使われていますが、明治以前は、「いろは」の方が庶民に親しまれていたようです。辞書も1889−1891年にできた『言海』という辞書以前は、主に「いろは」順だったそうです。
「いろはカルタ」という遊びを知っていますか。江戸時代後期にできた遊びらしいですが、二種類の札(ふだ=カード)「読み札(文字札)」と「取り札(絵札)」を使って遊ぶゲームで、一人が読み札に書いてある文を読み、他の人がその札の最初の文字が書いてあるカードを取る速さを競う遊びです。「いろは」の47枚と『京』の合計48枚で成り立っています。
「い」 犬も歩けば棒に当たる
「ろ」 論より証拠
「は」 花より団子
など、ことわざを使っている「犬棒カルタ」が有名ですが、その他、方言を使っているものなど、色々な種類があるようです。江戸版と関西版は違うそうなので、比べてみるのも面白そうですね。
『日本語の奇跡 <アイウエオ>と<いろは>の発明』((著)山口謡司 やまぐち ようじ 2007年新潮新書)によると、ひらがなの五十音図ができたのは、1947年だそうです。五十音図の原型と言われる「五音(ごいん)」は、11世紀にできたと言われていますが、カタカナで書かれることが一般的だったそうです。つまり、ひらがなは、「いろは」で、カタカナは「アイウエオ」だったというわけです。また、五十音の順序が今の「アイウエオ カキクケコ サシスセソ」になったのは、江戸時代になってからだそうです。